サン・サーンスの白鳥

チェロの名曲、サン・サーンスの白鳥について語ります。「動物の謝肉祭」という組曲の、終曲のひとつ前で演奏されます。

名前のとおり、いろいろな動物が出る組曲で、あきません。子どもの鑑賞にもぴったりですね。

最初の曲は「序奏と獅子王の行進曲」です。獅子王というのがよくわかりませんが笑、2台のピアノ、ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロ、コントラバスで更新曲を演奏します。

これから楽しい時間が始まるよ、というメッセージが伝わってきます。

2曲めは「雌鶏と雄鶏」です。

ピアノと弦楽器が鶏の鳴き声を演奏します。

3曲目は「らば」です。と言っても、言葉ではよくわかりませんね。そもそも短に「らば」っていないし。

4曲は「亀」です。

これは、有名な「天国と地獄」(オッフェンバック)のテーマが演奏されるのですぐにわかります。わざとゆっくり演奏するので、初めて聴く方は「?」となるはずです。

5曲めは「象」です。コントラバスがワルツを奏でます。伴奏はピアノだけです。

6曲めは「カンガルー」、コードが飛び回るカンガルーを描写しています。

7曲めは「水族館」です。グラスハーモニカが使われます。

8曲めは「耳の長い登場人物」というタイトルがついています。ここでもロバが出てきます。フランス人にとってロバってどのような意味があるのでしょう。決して良い意味ではないように思います。

9曲めは「森の奥のカッコウ」です。動物をモチーフにするなら、カッコウは必須ですよね。クラリネットとピアノ2台で森のカッコウを歌います。

10曲めは「大きな鳥籠」です。フルートが軽やかに飛び回っています。

11曲めは「ピアニスト」、と言っても名人ではありません。「わざとへたくそに」という指定がありますし、不協和音が楽譜にあるのですが、真面目に不協和音を下手に演奏するのは、アマチュアには至難の技です。

12曲めは「化石」というタイトルがついています。有名な楽曲の旋律がたくさん出てきます。

そして、いよいよ13曲め「白鳥」です。

伴奏ピアノは、1台がアルペジオを演奏し、もう1台はコードを入れてくれます。湖の静寂が現れます。そこに白鳥が静かに佇んでいます。

この曲は、チェロを演奏する者にとっては永遠の練習曲です。

音の高さはちょうどいいあたりで、ソ ファ シ ミ レ ソ ラ シ ドという旋律は単純で演奏することは簡単ですが、むしろむつかしいのは右手です。

旋律を演奏する緊張感で、つい右手に力が入ります。

右手に圧力をかけて大きな音を出すのはいいのですが、ついやり過ぎてしまうのです。

白鳥が薄暮の霧の中、静かに羽ばたいているのであれば、ギリギリと強い音で旋律を弾くのは違うでしょう。

でもアマチュアが緊張すると、そう弾いてしまうのですよね。

チェロという楽器の根源的な弱点は音量が小さいことです。

例えばブラスアンサンブルにチェロ1台入れても、音は全く聞こえません。

仮に10台のチェロを入れても音はほぼ聞こえないでしょう。1台のトロンボーンに軽く負けます。

オーケストラでチェロのソロがあるときは、普通は他の楽器は演奏しません。旋律を目立たせたいならファゴットやホルンが同じ音を演奏することはあります。

それほど、大きな音量で演奏することが苦手な楽器なのです。

それでも、この白鳥を演奏するなら、フォルテで演奏してはいけません。

archive.orgから楽譜を転載させていただきます。

出典:https://archive.org/details/lecygneextraitdu1900sain/mode/2up
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