ニューヨークのセントラル・パークは、不思議な空間です。
初めてニューヨークを訪問された方は、たぶん五番街を40丁目くらいから北上して歩いてみることでしょう。
私のお散歩コースもまさにそれです。
エンパイア・ステートを過ぎて、サックス・フィフスアベニュー、セント・パトリック教会、カルティエなどの前を歩いているだけで至福を感じます。
私は特にカルティエが好きです。
といっても、別にカルティエの宝飾品には興味がなくって(買えないし)、毎年クリスマスシーズンにカルティエが作成しているクリスマスカードを大量に買うのです。安っぽいところがまったくないデザインで、紙質も良く、宛名と自分の名前を書くだけで十分です。店員のサービスも申し分ありません(日本のカルティエではクリスマスカードを売っていないようで残念です)。
ニューヨークの五番街は歩道がとても広いので、人は多いですが余裕を持って歩くことができます。
やがてティファニーを過ぎるころから、前方に深い緑の公園が見えてきます。
左手にプラザ合意で有名なプラザホテルがあります。
セントラル・パークの南東には、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」で主人公ホールデン少年が「セントラル・パークのあひるは冬にどこへ行くんだ?」と呟いた、あの池があります。
セントラル・パークはマンハッタンが開発される際に真っ先に計画された人工的な公園です。それは航空写真を見ればよくわかります。
公園の中にはメトロポリタン美術館、動物園、レストランなどが上手に配置されています。ウエスト・サイドにはジョン・レノンのイマジン記念碑もあります。
旅行者にはなかなかチャンスがないかもしれませんが、日没後に訪れると、公園の中は蛍が飛んでいます。
アメリカにいて不思議に思うことは色々ありますが、日本人が蛍をとても貴重に思うのは意外です。感受性が高いのでしょうか。
日本の方をニューヨークでご案内していると、夜など普通にどこでも蛍を見られるのですが、ほぼ例外なく歓喜の声を上げ、時には涙されることもあります。地元のアメリカ人は全く意に介さないので、その対照が感慨深いです。
セントラル・パークは夜の顔と昼の顔がまるで違います。
日中はいろんな人が自由にくつろいでいます。散歩している方、芝生に寝っ転がっている方、読書している方、スマートホンを見ている方。
しかし夜は全く様子が異なります。
以前と比べてニューヨークの治安は劇的に改善されましたが、さすがに夜、セントラル・パークを散歩する気にはなりません。人が複数いる五番街沿いなどはギリギリありでしょうか。
五番街を80丁目まで北上すると、メトロポリタン美術館があります。
ここでは、まる1日滞在する予定で来館されることをお勧めします。興味のある作品だけ急ぎ足で眺めても、なんのために来たのかわからなくなりますし、そもそも美術館では自分の知らない作品に出会う楽しみが醍醐味です。
反対側の八番街沿いには、自然史博物館があります。私はむしろこちらの方が好きで、予定のない休日には歩いてよく出かけます。恐竜の骨格見本や触れる化石などは童心に帰って楽しめます。
いつの間にかセントラル・パークの西側に来ています。北の端まで突き抜けてもいいんですが、ハーレム方向は夜は人どおりの多い繁華街以外は歩かないのが基本ですから、南方向へ戻ることにしましょう。
セントラル・パーク・ウエストは、イーストサイドとは異なってややフランクな印象があります。
そんな中で、ダコタ・ハウス Dakota Apartments の一角は高級感が漂っています。72丁目の白亜の建物で、マンハッタンでは珍しくわずか10階建で、入口には守衛が立っています。
セントラル・パーク・ウエストを渡ってセントラル・パークに入ると、そこには Strawberry Fields (いちご畑)と名付けられた一画があり、「IMAGINE」のメダリオンが置かれています。
言うまでもなく、ジョン・レノンの名曲「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」と「イマジン」を記念したものです。メダリオンには常に誰かが花を捧げています。