プラハ、ドヴォルザークのチェロ協奏曲

チェロ弾きにとっては、プラハは特別な街です。

観光都市としても有名なチェコの首都プラハは、英語ではプラーグPRAGUEといいます。

大河の街、尖塔の街、お城のある街という印象です。

街の中心を流れる大河・ヴルタヴァは、ドイツ語のモルダウが日本では有名ですね。私も学生時代に「ボヘミアの河よ、モルダウよ」と歌いました。

この歌はチェコの国民的作曲家であるスメタナの交響詩「我が祖国」(英語ではMy Country)の第2曲「ヴルタヴァ」をピアノ伴奏と合唱で演奏できるように簡略化したものです。

実際にプラハを歩いていると、旧市街の古式ゆかしい雰囲気が独特の安心感をもたらしくれます。そしてどこからでも、プラハ城が見えます。

ちょうどフランツ・カフカの小説「城」のストーリーのようです。

カフカは1883年にプラハで生まれ育ちました。「変身」が有名ですが、私は「城」を強くお勧めします。この小説は、カフカ作品の多くと同様、未完です。結核により41歳を目前に亡くなったことで、完成の機会は永遠に失われてしまったのですが、作品の価値は少しも揺ぎないと思います。

なぜプラハを歩くのにこの「城」をお勧めするかというと、この作品では主人公Kが城に入ろうといろんな人に会いますが、結局城に入れないまま作品は(未完で)終わってしまいます。

プラハを歩いていると、ヴルタヴァからお城はとても綺麗に見えますがなぜかたどり着けないような錯覚に陥るのです。その感覚はどこかで経験したデジャヴのようです。まさに「城」の主人公Kのようだ、と私は思います。

さて、ヴルタヴァでもっとも有名なカレル橋の近くに、ドヴォジャークホールはあります。日本の小林研一郎マエストロがここでチェコフィルの指揮をしていたことが思い出されます。

ドヴォジャークの音楽は、スラブ風と言われます。交響曲8番や9番の旋律に顕著で、日本人にもとても親和性が高い曲調ですが、コブシを回しすぎると下品になってしまうから要注意です。

彼の音楽の集大成とも言えるのがチェロ協奏曲ロ短調作品104です。

オーケストラの序奏ののち、チェロが力強い旋律を高らかに歌い上げ、この曲の盛り上がりを予感させます。

第2楽章では、ヴルタヴァに浮かぶ白鳥を連想する穏やかな曲想が静かな感動を呼びます。

第3楽章で溜まったエネルギーが一気に爆発し、フィナーレまで息つく間もなく駆け抜けます。

最後にはチェロという音量の小さな楽器1本で、フルオーケストラをバックに聴衆を魅了させた演奏者の力量と、そこまで想定して楽曲を作成した作曲家の構成力に感動が残ります。

正直に申し上げて、私はこの協奏曲を人前で演奏するほどの技量がありません。それだけが心から悔しく思っています。ですが、いつかは演奏できるとも思っています。そう、きっとそのうち。

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