グスタフ・マーラー GUSTAV MAHLER はウイーン・フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団などで活躍した指揮者であり、未完の10番を含めた壮大な交響曲と歌曲の作曲家として知られます。
私が演奏したことがあるのは1番、2番、5番の交響曲のみですが、どの曲もOne of Bestであると自負できるものでした。それは曲そのものの壮大な構築の一つひとつを細かく検証し、私のようなアマチュア演奏者であれば一生懸命に練習し(さらい)、全体としてひとつの楽曲としてマーラーの想定した音に仕立て上げていく作業が心の底から楽しめたからです。
特に5番交響曲は、マーラーがアルマと結婚した直後に完成しました。幸福感に満ちたものになると予想しがちですが、まったく違います。
冒頭はトランペットのソロで始まります。トランペットはその華やかな音色から、圧倒的な勝利感を表現することが得意です。その楽器を使って、マーラーは冒頭に葬送曲を書いたのです。実際に作曲者自身の言葉で、In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)と記されています。
指揮者によっては、この冒頭のトランペットソロで指揮をせず、演奏者に任せることもあります。この冒頭を聴いただけで、聴衆は、もちろんステージ上の私たちも、この演奏会を成功を確信するのです。
1楽章冒頭のテーマです。(Wikipediaより)
すぐに第1主題が弦楽器で提示されます。最初はチェロで演奏されます。音程はチェロという楽器では高過ぎず低過ぎず、ちょうどいいレベルです。チェロ弾きとしては、このあたり(1番弦のファーストポジション)の音程は、実は取りにくいんですよ。まあ、この曲が演奏できるレベルであれば普通に取れますけどね。
この曲は5楽章で構成されます。2楽章では一転して激しい旋律がソナタ形式で綴られます。
3楽章は、実はホルン協奏曲とも言われます。広々とした空間を感じさせる世界観にホルンの音が会場を包みます。指揮者によってはホルンソロを独奏者として指揮者の隣に立たせることもあります。
そして5番交響曲の最大の魅力とも言えるのが4楽章です。
アダージエット Adagietto という指定があります。非常に遅く、ただし演奏者としては旋律が細切れにならないように気を使います。長い、大きなスパンで旋律を歌うことは大切です。
映画「ベニスに死す」のテーマですが、この旋律はその後も様々なメディアで使われています。これだけ美しい旋律であれば、使いたくなるでしょうし、なんども聴きたくなります。
弦楽器で演奏される部分です。ピアニッシモで歌うことがポイントです。初めて聴く方でも、すぐに耳に馴染見ます。決してデタシェ(弓の圧力を弦にかけて弾くこと)で弾いてはいけません。軽い弓圧で、しかし楽器はしっかり共鳴させるのです。
最後の楽章は、圧倒的な勝利感を感じさせます。最初に葬送行進曲で始まり、最後には勝利するということは、やはり人生の幸福の絶頂にある時の曲だとわかります。
今でもこの曲はチェロ練習に弾いています。いわゆるオーケストラ・スタディです。
願わくば、将来的に第9番を演奏する機会があれば思い残すことはありませんが、アマチュアではちょっと難しいかな。
スポンサーリンク