マックス・ブルッフはドイツの作曲家です。
この曲はユダヤ教の旋律が採用されていますが、ブルッフ自身はプロテスタントです。
最初はニ短調の暗い印象で始まります。
チェロの1番弦の第一ポジションの4の指(小指)の位置に当たるD(レ)の音から始まります。と言っても普通は2の指(中指)で音を出しますけれど。
ポジショニング、つまり指使いとしては非常に単純なので、初心者でも演奏はできます。
ですから、案外この曲を習ったことのあるアマチュア奏者は多いのですが、他人に聴かせられるだけの音楽性を伴った演奏は、プロの演奏でもあまりありません。
この曲の白眉は、前半のニ短調から、後半のニ長調に移行する部分であると思います。
チェロのあまりに重々しい閉塞感は、宗教的な苦悩を表現しているのではないかと思います。それでも緊張感を保って歌っていると、次の瞬間に苦悩が解き放たれ、天上の至福ののときが訪れます。
後半の出だしのコードは、ピアノ伴奏よりはオーケストラ伴奏でこそ幸福感が伝わります。
スコアを見ると、実はそれぞれの楽器が単純な音を伸ばしているだけであることが多いのですが、ブルッフはオーケストラ全体で見事なアンサンブルを構成しています。
全体としてはわずか10分ほどの曲ですが、宗教的な意味としては苦悩からの解放というシンプルなテーマがチェロの音色を良く生かしている名曲であると思います。