第九を演奏しよう。終楽章はフロイデ!!

いよいよ第九の終楽章です。

オーケストラのチェロパートをステージで演奏していていつも思うのは、「ついに終楽章になっちゃった」という感慨です。

これまでに何回も練習を重ね、オーケストラの全体練習(トゥッティ(tutti)と言います)でアンサンブルを作り、指揮者の音楽を感じ取り、オーケストラ全体のサウンドを一つに合わせる努力をして来たのは、まさにこの終楽章で昇華させるためだったのかと思います。

私は音楽の専門家ではありませんから、ここで第九のアナリーゼをするつもりはございません。

だから、その代わりというほどのこともありませんが、第九終楽章の構成をチェロ弾きの視線で諸々申し上げたく思います。

冒頭、オーケストラの重厚な響きがトランペットに先導され、至福の3楽章から解き放たれます。

すぐにチェロとコントラバスの弦楽低音部が力強い旋律を奏でます。

音楽用語で、この部分はレチタティーヴォ(イタリア語でrecitativo、英語ではrecitative)と言います。話すように歌う、という意味です。

モーツアルトくらいまでのオペラでは、登場人物の語りはピアノやチェンバロでバララン、とコードを弾いてから、旋律のない自由な語りを歌います。

この様子をレチタティーヴォと言います。

ベートーヴェンはここで旋律をレチタティーヴォで書きました。

ラから始まり、5度上がってミを長く歌います。

でもね、まだ冒頭なんです。ここで、力んで演奏してはダメなんですよ(と、自戒の念を込めて)。

本当に最高潮に達するのはまだまだ先です。

ここは、長い終楽章の冒頭の、それもレチタティーヴォです。

チェンバロで和音がジャララン!と流れた後で、「あなたはだあれ?」「私だよ、あなたの大切なジャックだよ」というような感じでセリフを歌う場面です。

でも演奏している人間にとっても、この曲をこれまで何回も聞いてきた聴衆にとっても、このレチタティーヴォの旋律は第九全体の印象を強く決定づける重要な場面です。

それは、私も含めて第九を知る人間は皆、その後でバリトンが「おお友よ、この調べでなく」という歓喜の歌詞を知っているからです。

この歓喜の歌は、色々な方が日本語の翻訳をしています。

やはりドイツ語の歌詞をしっかり習得しましょう。

そしてその意味を日本語で自ら考えましょう。

やはり、この曲は

フロイデ シェーネル ゲッテルフンケン

と歌いましょう。

An die Freude

O Freunde, nicht diese Töne!
Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.

Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!

Deine Zauber binden wieder,
Was die Mode streng geteilt;
Alle Menschen werden Brüder,
Wo dein sanfter Flügel weilt.

Wem der große Wurf gelungen,
Eines Freundes Freund zu sein,
Wer ein holdes Weib errungen,
Mische seinen Jubel ein!

Ja, wer auch nur eine Seele
Sein nennt auf dem Erdenrund!
Und wer’s nie gekonnt, der stehle
Weinend sich aus diesem Bund!

Freude trinken alle Wesen
An den Brüsten der Natur;
Alle Guten, alle Bösen
Folgen ihrer Rosenspur.

Küsse gab sie uns und Reben,
Einen Freund, geprüft im Tod;
Wollust ward dem Wurm gegeben,
und der Cherub steht vor Gott.

Froh, wie seine Sonnen fliegen
Durch des Himmels prächt’gen Plan,
Laufet, Brüder, eure Bahn,
Freudig, wie ein Held zum Siegen.

Seid umschlungen, Millionen!
Diesen Kuß der ganzen Welt!
Brüder, über’m Sternenzelt
Muß ein lieber Vater wohnen.

Ihr stürzt nieder, Millionen?
Ahnest du den Schöpfer, Welt?
Such’ ihn über’m Sternenzelt!
Über Sternen muß er wohnen.

Wikipediaより引用しました。

いやあ、それにしてもドイツ語って力強い音ですね。

英語やフランス語の語感との違いは何故なのでしょう。

「歓喜に寄せて」

おお友よ、このような旋律ではない!
もっと心地よいものを歌おうではないか
もっと喜びに満ち溢れるものを

歓喜よ、神々の麗しき霊感よ
天上楽園の乙女よ
我々は火のように酔いしれて
崇高なる者(歓喜)よ、汝の聖所に入る

汝が魔力は再び結び合わせる
時流が強く切り離したものを
すべての人々は兄弟となる
汝の柔らかな翼が留まる所で

ひとりの友の友となるという
大きな成功を勝ち取った者
心優しき妻を得た者は
自身の歓喜の声を合わせよ

そうだ、地球上にただ一人だけでも
心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
そしてそれがどうしてもできなかった者は
この輪から泣く泣く立ち去るがよい

すべての存在は
自然の乳房から歓喜を飲み
すべての善人もすべての悪人も
自然がつけた薔薇の路をたどる

自然は口づけと葡萄の木と 
死の試練を受けた友を与えてくれた
快楽は虫けらのような者にも与えられ
智天使ケルビムは神の前に立つ

天の壮麗な配置の中を
星々が駆け巡るように楽しげに
兄弟よ、自らの道を進め
英雄が勝利を目指すように喜ばしく

抱き合おう、諸人(もろびと)よ!
この口づけを全世界に!
兄弟よ、この星空の上に
聖なる父が住みたもうはず

ひざまずくか、諸人よ?
創造主を感じるか、世界中の者どもよ
星空の上に神を求めよ
星の彼方に必ず神は住みたもう

Wikipediaより引用しました。

いいですね。

お客様も、オーケストラも、皆「フロイデ!」と歌っています。

さて、音楽はまだ続きます。