初心者にもわかるチェロの独習方法です。
まずはチェロを買いましょう。
①大学生でオーケストラ活動をする方
②主婦(主夫)又は社会人で時間はあまり取れそうにないけれど長く続けたい方
③リタイアした方でそれなりの予算があるけれど、そもそも演奏できるか自信がない方
この3とおりに分けてお話しします。
大学生がチェロを習うなら
音大生以外の大学生の場合は、迷うことなくまずチェロの演奏技術を教えてくださるプロの先生を探しましょう。
学生オケなら大抵は指導等でご縁のあるプロ奏者とか、指揮者とか、又は先輩が実際に習っている方を紹介していただき、その先生に楽器店を紹介していただくのがベストです。
逆に、個人店主のような方が経営している弦楽器店で、「芸大(桐朋)の学生で、私に個人指導していただける方を紹介していただけませんか?」と頼んでみるのも良い方法です。実際に私はこの方法で桐朋のチェロ科の方を紹介していただきました。
プロの演奏家なら楽器の日常の取扱にも習熟しています。
弦楽器はどれも日常のメンテナンスが重要です。
例えばチューニング一つとっても駒の位置、角度、ペグ(糸巻)の取扱などに始まり、弦が切れた場合の交換方法や、魂柱(楽器の内部に直立している1本の太めの木の棒)が倒れた場合の修正方法は、素人には絶対に無理です。
私は10歳からチェロを演奏していますから、楽器の取扱は早くから習熟していました。
私が大学生になって、まずしたことは都内の楽器店を何軒も周り、2台目の楽器探しをしたのです。目的は2台目を探すことももちろんですが、やはりメンテナンスしていただける信頼の置けるマエストロを探したかったのです。
予算は全部で150万円でした。内訳は楽器100万円、弓30万円、ハードケース20万円です。この価格帯だと、選択肢は豊富でした。
初心者の学生であれば、安い国産モデルをまず検討するはずです。日本にはスズキという楽器メーカーが名古屋にあります。私も生まれて初めて手にしたチェロはスズキ製でした。今でも初心者用から中級者用まで良い楽器を作っています。何より、10分の1まで子ども用のモデルを揃えているところが素晴らしいと思います。
最近は中国製を勧めてくださる楽器店も多くなりましたね。何本も手にしたことがありますが、本当によく鳴る楽器が多くて、アマチュアが使うにはもったいないものもあります。
ドイツにも初心者が使える楽器がたくさんあります。30万円くらいからあるようですが、主流は50万円クラスのようです。
主婦(主夫)の方、社会人の方なら
主婦(主夫)の方や、社会人で時間はあまり取れそうにないけれど、チェロという楽器の音色が好きで、長く続けたいと希望する方は、目標を定めると良いと思います。例えば社会人のオーケストラに加入して、ブラームスのシンフォニーを演奏したいとか、ベートーヴェンの第九のレチタティーボをステージで演奏したいとか、動機は何でもいいのです。
目標さえ決まれば、あとはそれに向かって細く長く努力するだけです。
まずは楽器の購入ですから、できれば予算を最低50万円確保して、中級者用を購入されることをお勧めします。
このクラスであれば多分、なんとか一生もので使用できるはずです。
よほど上達して、コンチェルトを弾けるくらいになったら物足りなくなりますが、そのときに考えましょう。
リタイアして予算と時間のある方なら
最後に、リタイアした方でそれなりの予算があるけれど、そもそも演奏できるか自信がない方のお話です。
ある程度の年齢を重ねてからでも、チェロを演奏できるようになるのでしょうか?
回答は「全く心配いりません」です。絶対にチェロは楽しめるようになります。
チェロの演奏では、肉体的に酷使する部分は左手の指だけです。痛い、と感じるのは相当上達して、左手の親指を使って音階を取るようになってからです。
そのレベルでは左手の親指の側面を弦に強く当てなくてはなりません。この時に指にタコができるのですが、その最初だけ痛いです。でも、できてしまえばあとは何も感じません。
他のヴァイオリン属では身体に不自然な姿勢が要求されますが、チェロはそんなことはありません。大きさも大人にはちょうど良いでしょう。
経費のこと
さて、経費です。これまでのことを含めて全て私見ですが、予算があるならあるだけを投資して楽器を購入されることをお勧めします。なぜなら弦楽器は楽器半分、演奏者の技能半分だからです(この割合は人によって違います)。
残念ながら初心者用の楽器では、深みのある艶やかな音は出ません。上達も高価な楽器の方が早いと私は思います。
芸能人の格付けバラエティで、ストラディバリウスと初心者用を同じプロ奏者が弾くという企画がありますが、あれは一流のプロ奏者であれば、初心者用でも聴く人を感動させる演奏が可能であり、普通は判別できないはずです。
ただし技能が初心者だと、どちらの楽器でも下手にしか聴こえません。
ところがある程度の演奏技能が身につくと、自分で楽器の音色に不満を抱くようになるのです。
「楽器が鳴る」と言います。「よく鳴る楽器」、「鳴らない楽器」とも言います。音響や湿度の影響もあります。でも鳴らすのは自分なのに、楽器のせいにするなよ、と思いますが、全ての演奏者に共通する実感でしょう。
高価な楽器は所有する喜びも少しですがあります。楽器のF字孔を覗くと紙のラベルが貼ってあり、そこにクレモナの名前を見るとちょっと誇らしい気持ちになります。将来的に止むを得ず手離すことになった場合、楽器商によっては販売価格の半額で引き取ってくれるところなど、色々あるようです。
チェロ・レンタルという選択肢
ところで、もしそれほどお金をかけたくないのなら、実はベストの選択があります。ヤマハの楽器レンタルです。
ヤマハは日本が産んだ世界的な楽器メーカーです。静岡県浜松市に本社があり、創業は1887年(明治20年)、創業者の山葉寅楠(やまは とらくす)が外国製オルガンの修理を手がけたことがきっかけで、自ら製造するようになりました。日本のピアノ産業の多くは浜松を拠点としていますが、彼が礎を築いたことは間違いありません。
さて、そのヤマハはピアノ製造に始まり、金管楽器、木管楽器、打楽器、ギター、電子楽器と多種多彩な楽器を作ってきました。
現代ではヴァイオリンやチェロなどの弦楽器も作っています。それも素晴らしいレベルです。この楽器レンタルは、このような楽器を毎月1万円程度のレンタル料金で借りられるのです。自分もかつて、実際にレンタルしていたことがあります。興味本位でしたが、音色を含め楽器は十分満足のいくレベルでした。ですからお勧めできるのです。
演奏についてはまた機会を改めます。