ニューヨーク市内に、有名な大学は多く存在します。
中でもアッパー・イーストサイドのコロンビア大学は別格であると思います。
1754年開学の北米で五番目に古い大学で、常に全米最難関のエリート校としてランキングされています。
本部はモーニングサイド・ハイツと呼ばれるハドソン川沿いの小高い丘の上にあり、ハーレムやセントラルパークが美しく見えます。近くにはリバーサイド教会やセント・ジョン・ザ・ディヴァイン大聖堂もあり、ニューヨークをよく知る観光客にとっては穴場のようなスポットにあります。
難関大学とはいえ、学生数は常時32千人を超える巨大大学です。
アメリカの私立難関大学の例に漏れず学費は高く、大学の資料によると医学部を除いた全学部の平均で年間57千ドルだそうです。さらに生活費や学習資料代などを総合すると年間74千ドルかかるとか。なかなかのものですね。
もし情報処理能力が高い(つまりIQが高い)方で、親がお金持ちか、又は豊富にラインナップされている奨学金をもらえる学力のある方なら、ぜひ入学すべきです。
その最大の理由は、完璧ともいえる教育環境です。
世界の知能の結集ともいえる教授陣、学術だけでなく政治芸術文化風俗などの最先端が集積するマンハッタンという立地、この2つがあるだけで最高の環境といえるでしょう。
学問にお金がかかるのは当然です。そこはあきらめて自分の資力と知力の兼ね合いで落としどころを探すだけです。
お金もうけでもなんでも、この手のお話に裏道はありません。
ところで私は、コロンビア大学をよく知っています。何度も行ったことがあるからです。それも仕事で。
そのうちの1回は、高名な日本文学者のドナルド・キーン先生を訪問したのです。
キーン先生は長い間、コロンビア大学で日本文学を教えていました。先生の業績や人格識見の素晴らしさは私が申し上げるまでもないことですが、先生の下で一緒に研究されていた教授等の諸先生も、素晴らしい方ばかりでした。
私がキーン先生とお会いした目的などは書けないのですが、場所は教授専用のファカルティハウスでした。荘厳な雰囲気のレストランで、ランチをご馳走になったのです。
緊張する私に対し、先生はあの優しい眼差しと、典雅な日本語でインタビューに答えてくださいました。
たぶん1時間くらいの滞在であったと思いますが、1年分くらいの充実感をいただきました。
先生の肩越しに見えるハーレムの街並みがとても美しかったことをよく記憶しています。
先生は、その後日本にお越しになり、そのまま日本人として他界されました。
先生の文学は、世界に日本とその文化を紹介してくださったかけがえのないものです。