五嶋みどりとその演奏について考えています。
彼女が一般的に名前が知られるようになったのは「タングルウッドの奇跡」と呼ばれるできごとが大きかったのでしょう。
けれど 私にとってはバッハの無伴奏パルティータを聴いてから、やっと彼女の世界観を理解できたような気がするのです。
無論それは自己満足です。
素晴らしい演奏を無条件に楽しめることが心からありがたいです。
私はチェロ弾きですから、こんなに重音の多い曲を演奏する機会がありません。
簡単に「演奏の難しい曲」などと言いますが、アマチュアでこの曲が演奏できたら、間違いなくプロを意識したことでしょう。
さて、五嶋みどりの無伴奏パルティータです。
まずは、有名な2番「シャコンヌ」をお聴きください。
バッハについて語ると長くなるのでいつか別の機会にしますが、五嶋みどりのシャコンヌは、その音楽性の雄大さに圧倒されます。
宇宙を彷彿とする雄大さは、憧れにつながります。
構成は次のとおりです。
BWV1001 ソナタ第1番ト短調
BWV1002 パルティータ第1番ロ短調
BWV1003 ソナタ第2番イ短調
BWV1004 パルティータ第2番ニ短調(終楽章が有名なシャコンヌ)
BWV1005 ソナタ第3番ハ長調
BWV1006 パルティータ第3番ホ長調
できればそれぞれについて、楽譜を見ていただくと良いと思います。
バッハという作曲家の偉大さがわかります。
私にとってバッハとは、無伴奏チェロソナタです。
第1番から第6番までありますが、正直なところまともに演奏できるのは3番まで、4番以降は納得の演奏は無理かもしれません。そもそも6番なんて、5弦用に作曲されています。
再び五嶋みどりの演奏について考えます。
ヨーロッパの宗教音楽を考えるとき、そのキリスト教世界観が深く理解できないと鑑賞できない、とまでは言いませんが、少なくともバッハの音楽はキリスト教の理解が不可欠だと思います。
それだけの理由で、つまりバッハの音楽を理解したくて、聖書は旧約から新約まで、英語版も日本語版も読みました。ニューヨークで知り合ったモルモン教徒の方に勧められて、モルモン経まで両方の言語で読みました(これはバッハとは直接関係ありませんが、キリスト教世界を知るためです)。また日曜日にはマンハッタンのダウンタウンからハーレムまで、あらゆる教会にも行きました。
そこでの経験はあまりに小さすぎてここで披瀝することではありませんが、少なくともバッハの世界観の入り口にはたどりついたような気はしています
そんな私が感銘を受けた五嶋みどり(MIDORI)の無伴奏パルティータを、また聴いてみようと思います。