タングルウッドの奇跡 – MIDORI!

五嶋みどりの音楽を聴いていると、その音楽性の深さに引き込まれます。

深海の底まで誘われたかと思うと、その次の瞬間には宇宙の果てへ光速で突き抜けたような爽快感が広がります。

彼女の音楽は、世に出た最初から五嶋みどりの音楽でした。

ちょっと古いお話ですが、彼女の名を世界的に知らしめるきっかけの一つとなった、タングルウッドの奇蹟について考えています。

まずは、ニューヨークタイムスの古い記事を引用します。

https://www.nytimes.com/1986/07/28/arts/girl-14-conquers-tanglewood-with-3-violins.html?auth=link-dismiss-google1tap

New York Times 1986/07/28

この時代はインターネットがやっと普及しようとしている頃ですから、ニューヨークタイムスにも電子版なんてありません。紙です。

引用した記事は貴重な記録です。いわゆるツッコミどころがたくさんありますね。

日本では五嶋みどりですが、海外ではMIDORIで通用しています。だから私も本当はMIDORIと呼びたいのですが、日本語だとちょっと不遜な印象になってしまいますから、ここは五嶋みどりにします。

で、なぜかMI (間隔)DORIです。

14歳の日本人の少女ですからね。すでにジュリアード音楽院だけでなく独奏者として名を成している(だからタングルウッドに呼ばれてバーンスタインと共演したんですけど)のに、ニューヨークタイムスの記者には無名だったのでしょう。

Miss Doriとも呼んでいます。おいおい笑。

肩当て(shoulder pad)のことを顎当て(chin rest)と間違えているのもご愛嬌です。

さて、演奏についてです。

曲目はバーンスタインの作曲した「バイオリンと弦楽オーケストラのためのセレナーデ」です。

バーンスタインらしい、アップテンポでジャズの香りのする軽快で音楽性豊かな名曲です

バーンスタインの曲というと圧倒的に「ウエストサイドストーリー」が有名です。特に序曲「キャンディード」は、チェロ弾きの私でも好きで好きでたまりません。ステージでも何回か演奏しましたが、指揮者がへぼだと最悪なんで、そこが辛いところかなあ。

閑話休題。

タングルウッドの奇蹟のストーリーは、シンプルです。

バイオリン協奏曲を演奏した14歳の少女が、演奏中にE線が切れてコンマスと楽器を取り替えた。

しばらくしたらまたE線が切れたので、またコンマスの楽器と取り替えた。

見事に演奏を終えた。

以上です。

E線は4本ある弦のいちばん高い音を出す弦なので、細くてよく切れるんですよね。

ただ面白いのは、場所がタングルウッドであること、取り替えた楽器がストラディバリウスとガルネリだったことです。

タングルウッド音楽祭は、マサチューセッツ州の西にあるタングルウッドという街で開催される野外演奏会です。

私も聴衆として参加したことがあります。

ステージとその近くのエリアは椅子と天井のある演奏会場ですが、屋根が途切れるところから先はオープンエアーで、ピクニック気分で芝生に寝そべって演奏が聴けるのです。もちろん飲み食いOKです。

ではカジュアルな演奏会かというととんでもなくて、オーケストラはボストンシンフォニーという世界的なオーケストラで、指揮者も超一流、ソリストも超一流です。そこへ14歳のMI DORIですよ。

バイオリン奏者に限らず、弦楽器の弦はよく切れます。特にタングルウッドは基本的に屋外ですから、弦には過酷です。

ニューヨークタイムスの記事を見ると、コンサートマスターは弦が切れた場合の準備としてしっかり予備の弦を用意してあったんですね。でも上着のポケットに入れて、その上着は着ないで演奏しちゃうところがさすがアメリカ人です。

で、私が驚いたのはボストンシンフォニーのコンマスがストラディバリウスを持って演奏していたこと、サブコンマスがガルネリを持って演奏していたことです。

どちらも、普通に数千万円から億を超える歴史的名器と思われます(厳密にはその楽器のコンディションとか色々ありますけどね)。

確かに日本でも、弦楽器専攻の音大生が持つ一番手の楽器は数千万円しますからね。

やはり世界の名オーケストラのコンマスやサブコンマスは、ストラディバリウスやガルネリを持つんですね。

ということで、やっと本題です笑。

色々探したんですが、当時の録画はこのYouTubeしか見つけられませんでした。

画質と音質がとても残念ですが、百聞は一見に如かず。

どうぞご覧ください。



参考まで、MIDORIの演奏しているバッハもどうぞ。私は世界最高峰のバッハだと思っています。

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