IN COLD BLOOD (冷血)を読む

背筋が凍るような戦慄を覚える犯罪があります。特に金目当ての強盗殺人は、その動機の単純さに比較し、結果の重大性に情状酌量の余地はありません。いわゆる極刑しか選択の余地はない、と裁判所が判断するのも止むを得ないでしょう。

アメリカ中西部カンザス州ホルコムという田舎町が事件の舞台です。

カンザスは行ったことがありませんし、一生行かないだろうと思います。アメリカの地図を見ていただければわかりますが、大陸を東西に横断するインターステート40号が走っており、車で避暑地として有名なコロラド州デンバーに行けます。仕事で北部のネブラスカ州に一度行ったことがありますが、無限に広がるトウモロコシ畑に呆然とした記憶しかありません。そしてホルコムはインターステート40号の南70マイルほどを走る400号線沿いの街です。

ノンフィクション・ノベルという小説のジャンルは、トルーマン・カポーティ自身がこの作品で命名したものです。

私はこの小説を原語版で読んでから、翻訳を読みました。

文章は淡々と、乾いた筆致で事実を描き続けます。事件の場面描写も余計な虚飾はありません。そのことが逆に犯行の凄惨さをストレートに伝えます。

実際に発生した犯罪を題材とする小説は多くありますが、この作品の特異性は、犯罪者に何度も直接インタビューし、まさにノンファイクションの作品として確立したところを、ノベライズともいうべき描写でジャーナリスティックな価値を高め、さらに深い芸術性を得たのだと思います。

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